自然栽培とは 失敗に学び繰り返さないために | |
---|---|
■これまでの失敗 事務局ナチュラル・ハーモニーの例 〜自然栽培普及での失敗から自然が見えてくる〜 「肥料と農薬を使わないだけでは、自然栽培はできない」 正直、申し上げて、私たちもこうしたことがお伝えできるようになってきたのは、さまざま先駆者と研鑽を重ねてきた上でのことで、2000年ころからのことです。 それまでは前述のように、ある意味、ただ肥料・農薬を使わないでくださいといって取り組んできました。そのことで、何人かの農家さんの生活はひっ迫してしまったケースもありました。もちろんそれぞれの農家さんは自己責任のもと、ご自身の決断として、取り組んでくださっています。 当時からやり抜いてくださっている農家さんは、それは他にはない自然観というものを掴んでいる方もいらっしゃいます。しかし、ただ肥料・農薬を使わないというだけでは、結果、作物はなかなかできないのです。 生活のかかっている農家さんは、作物ができなければ、「米ぬかくらいはいいじゃないか?自然なものだし。」「緑肥くらいはいいじゃないか。」「生物農薬くらいはいいじゃないか?」「動物の糞尿も自然のものじゃないか?」と不安と疑問がもたげ、常識が邪魔をしてくるのです。 野山の草木が、肥料や農薬がなくとも育つその自然本来の力を認めることができなくなります。「やっぱり自然栽培はできない!」という結論を出すことは、ある意味、あまりにも簡単です。これまでの常識の中に戻るだけなのですから……。 それこそ肥料や農薬を使わないというのは、今でも、そんなことを言い出せば地域で、特異な目で見られてしまいます。本当に変わりもの扱いされてしまうのです。そんな中で、当たり前に見せながら、地域の人の理解を得ながら、全国の先駆的農家は取り組んでいらっしゃいます。 ■これまでの失敗 自然栽培をなぜ断念せねばならなかったのか 事務局ナチュラル・ハーモニーの例でいえば、自然栽培はやっぱりできないと断念された方は、今のところ二人です。 方向性がやや違って、微生物資材を使っている方は何人かいらっしゃいます。それはそれで信念をもっての歩みなので仕方のないことですが、自然栽培として取り扱えないということもあります。 その断念された方も、信念の強い人柄のよい方でした。若いころ仲間を農薬でなくし、より安全な農業を目指されていました。それでもやはり高齢でもあり、私たちも再三、さまざまな形でアプローチをしたのですが、なかなか後から肥料や農薬を抜いていくという話をしても、伝わらなかったケースがありました。 ■肥料や農薬を使わず放置するだけが自然ではない 過去の肥料や農薬を、放置するのは自然ではなかったのです。田畑という自然環境では、人も加わることで、その環境を悪化させることもでき、浄化のスピードを速めることもできます。過去の清算は人も自然もせねばならない。その過去を清算し、未来をつむぐ。田畑一枚一枚からの日本列島をきれいにし、いわば地球の洗濯の一助を担う。それがこの自然栽培の一つの使命です。 ■自然農法成田生産組合での事例 自然農法成田生産組合は 1975 年から自然栽培に取り組むグループです。会長の高橋博氏、関東ブロック副ブロック長の肥沼 一郎氏は、この成田生産組合の組合員です。 ナチュラル・ハーモニーとともに自然栽培全国普及会の発足前から全国の農家に自然栽培の普及活動を行ってきています。 その自然農法成田生産組合でも、30 年の歴史の中で肥毒に行き着いたのは、20 年前です。自然栽培に取り組むようになって 10 年たったころです。その後、10 年間かけて確認し、肥毒を取り除くことをさまざま実践してきました。 そして 10 年ほど前にやっと確立できたといいます。その間、無肥料・無農薬でやっていた間は、農産物もなかなかできなくて、自然栽培の思いや取り組みに感動して、スタートした数々の生産者も、中にはやむを得ず、やめていく人もあったといいます。肥料・農薬を使わないだけでは、自然栽培はできない。改めてそれが、現実なのです。 ■繰り返されすぎた失敗から学ぶ 自然栽培・自然農法といいながらも、肥料や農薬を使用している場合があります。否定するつもりはありませんが、肥料・農薬が土中で肥毒となり大自然の力を止めているという原因に立ちかえって判断しない限り、対処療法を繰り返すしかなくなるのです。 結果がでなければ、継続はむつかしく農家は肥料・農薬を使っていないとごまかすか、続けられないという判断をしなくてはならなくなります。 つまり、「自然栽培なんてできるわけがない!」という結論を出すことになるのです。 そうした結論を出すことは簡単です。そしてそうした失敗は、自然栽培に限らず、有機栽培・無農薬栽培・特別栽培といった現場で、これまでにあまりにも繰りかえされすぎたと思うのです。 さもなければ、自然栽培全国普及会が立ち上がるはるか以前にすでに1920年代から自然栽培はあったわけで、もっと広まっていてよかったのです。 ■「売れるからやる」ではできない! 「売れるから自然栽培をやってみたい!」 「買ってくれるならやるよ!」 こうした言葉を最近たまに耳にすることがあります。 しかし、 「売れるからやってみたい!」 「買ってくれるならやるよ!」 だけではこの農業はできません。 「肥毒」を取り除かない限り、どこかでごまかすか、やめるかせねばならなくなるのです。だから、流通会社の責任も重要になります。株式会社ナチュラル・ハーモニーの例でいえば、新たに取り組み始める農家さんとは、「肥毒」をはじめとする自然栽培の理念、原理、そして土作り計画や圃場登録など、しっかりと打ち合わせを行った上で、取り組みはじめていただくようにしています。 ■同じ苦しみを味わないために! 世の中に自然栽培が広まることは私たちにとって本望です。 しかし、それが本当に大自然にあった農業でなければ、本当に広がることはできず、農業者をはじめとして、それにまつわる流通業者・消費者が苦しむということを事前にお知らせする必要をしみじみと感じます。 それは、自然栽培を先駆的に実践してこられた農家の方々も同じ思いなのです。 「自分たちと同じ苦しみをこれからの人が味わう必要はない!」 多くの自然栽培農家がそういうのです。 「自然栽培は売れるから」、「だれだれさんの本を読んで、今の有機栽培では付加価値がつかないから」では自然栽培はできない、そのことを当然のことながら農業者のみなさまにはご理解いただく必要があります。 次へ できている事実を育む |