生産者紹介

関東ブロック 副ブロック長 磯貝 香津夫 氏                      

 群馬県の自然栽培生産者グループ「ぐんま古里農園」のリーダーを務める磯貝香津夫さん。15ヶ月間という長期間の栽培で育つ「下仁田ネギ」。畑から旅立つその日を見守り続けています。


■小さな巨人

日本三大奇勝「妙義山」を臨む下仁田ネギの畑  磯貝香津夫さん。


 慣行栽培と有機栽培も経験する中で、作物は肥料ではなく自然の力で育つのだと気付き、現在では全面積で自然栽培を行なっています。
 また、地元で「ぐんま古里農園」という自然栽培の生産者グループでリーダーを務めています。小柄なそのお身体からは想像できないくらい、大きな志が感じられる方です。新たな自然栽培生産者の育成にも力を注ぐ熱心な生産者さんでもあります。
 磯貝さんが手がける「下仁田ネギ」はとっても美味しく会員さんの中でも大好評。その「下仁田ネギ」のことを中心に、磯貝さんがなぜ自然栽培を始めるに至ったかを伺ってみました。


 自然栽培6年目の畑にどっしりと根を下ろす下仁田ネギ。フルーティな味わいと、とろけるような舌触りが特徴の「磯貝さんの自然栽培下仁田ネギ」は冬だけの貴重品。
この季節にしか味わうことのできない旬の味覚!  


 「下仁田ネギ」。ネギの最高峰と呼ばれる有名なネギ。その名の通り、群馬県の下仁田近辺の地域では非常に美味しく育つとのこと。日本三大奇勝の1つ「妙義山」を臨む、澄み切った風が吹き抜けるネギ畑があります。

 下仁田ネギ成育期間は、なんと、約15ヶ月間! 2度の植え替えをしながら育てられるのです。「ネギの最高峰」とまでいわれる所以は、味わいはもちろんのこと、とにかくその手間と時間がかけられた栽培方法にあるのだそうです。

 しかも江戸時代から栽培されているといわれるほど歴史深く、群馬県下仁田町を中心に長い間、自家採種によって代々受け継がれてきた固定種。他の地域では栽培することが難しいともいわれている大変貴重なネギです。



 磯貝さんの畑は、実に1000年以上もの耕作歴があると言われている地域。自然栽培6年目を迎えた地力の豊かな畑では、今年も立派に下仁田ネギが育てられていました。
 畑一面に広がるネギの姿を見ると、「よく育ってくれたね」と感謝の気持ちが自然と沸いてきました。

 きめの細やかでしっとりとしたネギ畑の土  畑の土をすくってみると、しっとりと湿っていて、きめの細かい柔らかな土であることに気づきます。この地域の、1000年以上という長い耕作の歴史と素性の良さを感じさせる土質です。


 驚いたのは「土の温度」。下仁田ネギの畑の土は、冬の寒さの中でもしっかりとした暖かさも保っているのです。一方、近くの慣行栽培の畑の土の中に手を埋めると、体の芯まで冷やされてしまうのでは!? と思うほどに冷えていました。肥料や農薬が土を固めて冷やすのを体感した瞬間でした。
肥料がネギを悪くする?

 バラつきのある長ネギ行った畑も見てきました  こちらの畑は自然栽培15年目なのですが、ネギの苗を定植した後に大雨が降ったところ、一部の苗が枯れてしまったのだそうです。磯貝さんは、「近隣の畑から流れてきた肥料分が影響を与えたのではないか?」とおっしゃいます。

 自然栽培では、土が綺麗になればなるほど肥料や農薬などの不純物の影響を受けやすいと考えています。一般的には作物を育てといわれているはずの肥料が、自然に近づけば近づくほど悪い影響を及ぼすなんて興味深いですよね。


■磯貝 香津夫さんからのメッセージ
 私は慣行栽培から有機栽培へ、次に自然栽培と三つの農法と出会いました。30歳ころより体調不良に悩まされたことが契機となり食に関心が向いて、日々の食事は食品添加物、化学肥料、農薬などを排除した食材でなくてはならないことに気づいたのです。良い食材に切り替えれば、それで直ちに健康になれた訳ではありません。土の肥毒を抜かなければ作物も育たないように、体に溜まった毒素を出してゆかないと健康にはなれないのです。体験から人の健康も土の健康も同じだと感じています。だから作物がよく育つように土つくりに励むこととあわせて、食べる食材を改善してゆきましょう。
土つくりも健康つくりも根気強く取り組まなくてはならないものと最近感じています。自然栽培に切り替えて10年以上経過している畑で、昨年、肥毒がまだ残っていることが作物に表れていたのです。最後にこの普及会に関わっているみなさんと共に願いが叶うよう歩んでいきましょう。