生産者紹介

副会長 石山 範夫氏                        


■6本目の根っこ。〜自然栽培が稲の根を発達させた〜
 自然栽培をはじめて驚いたのは、稲の根です。
ササニシキは台風が来てもまったく倒れなかったことですね。やはり根の張りが違う。
大潟村は元々ミネラルの豊富なところで宝の山と言われるほどの微量成分が土に含まれています。
 これは干拓された歴史によるものです。このミネラルをどうして稲に吸収させるかが課題でした。稲には主根と副根があります。この副根の数が今までどうやっても5本までしかでなかったのです。
 5本までは根が茶色で細かい微量成分を余り吸収することができません。有機でも5本目まででした。一般の栽培だと4本目までしか出ません。

 そして、6本目が出ればいい米が作れると言われていたわけですが、今年肥料を入れない自然栽培で作って6本目の副根が出たわけです。6本目からは茶色ではなく白い色の根で微量要素を吸収しやすいといわれています。これは大きな発見です。



■ 東北ブロックの動き
 東北ブロックでは、2012年3月22日、3月23日に自然栽培全国普及会 東北ブロック立ち上げ式を行いました。各県に地区長(県のリーダー)を担っていただきました。岩手県 酒勾 徹さん(東北ブロック副ブロック長兼任)、秋田県 阿部 淳さん、宮城県 浦山 利定さん、山形県 真島 稔さん、東北ブロック事務局 齋藤一樹さんとなっています。福島県は関東ブロックに入ります。


 また東北地区では、稲作について生産者自らが集まって各ブロックのメンバーと技術研鑽をすすめていくことにしています。秋田県ではすでにスタートしています。稲作のチェックシートを設け、自然栽培として取り組むうえで技術的に外せないポイントを確認しあっています。農家自らが研鑽しあう。しかも大自然を先生に取り組んでいくというのがこの自然栽培に取り組む農家のあり方だと思います。本来の食を取り戻すために研鑽しあっていきましょう。


 この夏は、草との戦いでした!ずっと……。毎年そうですが、草との戦いが続いています。もちろん草には役割があるのですが、除草作業は大変ですね。今年はコナギで95点までできたと思います。ヒエには負けました。コナギを抑えるためにと一部ヒエの種を蒔いてみたのですが相手が強すぎましたね。
 田んぼ1枚(1.2町歩)に延べ100人以上で100万の経費。草にやられて4俵程度の収穫量だと150万。すると慣行栽培で150万なのに、慣行の1/3の収入になってしまいます。

 変わらない収穫量になってしまいます。だから他の畑の除草に精一杯だったこともあり、一部のヒエに負けた田んぼ2枚はあきらめました。ただ全体としては平均して8俵獲れていると思います。


 この夏は仕事の合間をみて山形県の自然栽培農家を訪問しました。山形県東置賜郡の中川弘吉さんは、種籾の芽出しを低温でやっていました。普通の水道の水を使っていたので、それでは発根しないよと言ってきました。温湯消毒ののち、湿潤な状況で17度以上じゃないと植物ホルモンの一種で種皮にある発芽抑制に働くアブシジン酸は溶けず、発根しずらくなります。だから温度をあげないといけないので、そんな話をしてきました。大潟村の齋藤 一樹さんも、中川さんと同じようにやっていましたが、発芽が不揃いで我が家から苗をもっていきました。大潟村では1箱に140g種を蒔いていますが、40g分くらいしか発芽していませんでした。温湯消毒と芽出しはしっかりした方がいいのではないかと思います。


 山形県飽海郡の真島稔さん真島一さん親子、そして鶴岡市の佐久間優さんにも会ってきました。お二方ともとても、まじめな方で真剣で頭が下がる思いがしました。今年行った自然栽培農家の中で、田んぼで草のため1俵いかないくらいの収穫量の方がいらっしゃいました。抜本的に農業技術の向上が望まれるところです。今夏の私もそうですが、自分で除草できる範囲、除草技術・能力の範囲で自然栽培に取り組まないと経営が成り立たなくなります。別に、農薬や肥料を使う農業をわれわれは否定するわけではないのだから、自然栽培以外の農業も平行して行いながら、自分の能力の範囲で手がけることが肝心だと思います。自分の力に見合った面積を心がけてください。